新穂高、4月の西穂高山頂日帰り



積雪期の西穂高岳(写真は山頂から奥穂高方面 ※一番高く写ってるのがコブ尾根の頭。最高点の奥穂はもっと奥の小さいピーク。)
それなりの山岳知識と装備が無ければ登れませんが、尾根地形で雪崩も無いので、天気さえ見誤らなければ最高の景色を拝む事が出来ます。


新穂高⇔西穂高、夏に私が登った時は6時間15分で往復できましたが…。
新穂高ロープウエイの営業時間は9時前〜16時15分。
この山で時間に追われながらの登山は危険すぎますから、帰りに2時間以上の余裕を持つという条件で、可能なら西穂山頂まで行ってみるという予定を立てて、2014年4月14日に友人と突撃してきました。

無雪期の記録は こちら を参考にしてください。

昨年、ピラミッドピークで引き返した記録は こちら を参考にしてください。

翌年、3月に登った記録は こちら を参考にしてください。


注意
※丸一日快晴で風も微風という日を選んで出発していますが、この時期、滅多にこんな日はありません。
 風が強くて新雪直後だと難易度は格段に上昇しますので、くれぐれも天候判断は見誤らないようにしてください。
※雪庇を見抜く能力、雪の岩場で上り下りできる能力、万が一トレースが消えても確実に帰投できる能力(もしくは登山用GPS)は必須です。
※前爪付きアイゼンとピッケルは必須です。
※今回は一切ラッセル無しの時間です。雪の状態で時間は大きく変化します。必ず余裕を持つ事を忘れないようにしてください。
 (昨年は前日が悪天候だった影響もあり、独標から先のトレースが無く、考えながら登っているので、ピラミッドピークまで今年の1.5倍も時間がかかっています。)

要するに、素人がいきなり登れる山ではありません。それなりの経験を積んだ上で挑戦してください。



6:40  :  新穂高温泉手前の道の駅、奥飛騨温泉郷着。朝食等。

7:30  :  新穂高登山者用駐車場へ
       新穂高へ向かう車の中から槍ヶ岳も見えて、予想通り最高の天気。

8:00  :  準備をして新穂高ロープウエイ駅へ。
       
〜〜〜 独標までは省略 ( 去年の記録 を参考にしてください)〜〜〜
       


10:35 :  独標着。
       フルマラソンを走れる友人のペースに引っ張られ、昨年に比べ独標まで早く辿りつけたなと。
       昨年は独標から下る段階でトレースが無くて、考えながら降りて行ったけど、しっかりとしたトレースがついてる。
       移動性低気圧が日本南岸へそれたため、北アルプスは数日間晴れが続いたおかげだ。(しかも前日が日曜で人が多かっただろうし)
       今年は安心して進めそうだなと。
      
       ※ココから先は超危険地帯です。適切な装備、判断力が要求されます。
      
       

       
       昨年苦労してルート工作しながら登ったピラミッドピーク直下の急斜面も、このように階段状に踏み固められていて、
       今年は何一つ苦労することなくあっさりと登れました。
      
      
11:00 :  ピラミッドピーク着。
       
       ↑山頂方面までしっかりとしたトレースがついてるし、天気も良好。
       なによりも昨年より30分以上早い到着。
       これなら今年は山頂アタックできそうだ!
       (昨年は独標ピラミッドピーク間に40分費やして、この区間でこの時間がかかっているなら、ここか先へ行くと焦りが生じるから無理だとの結論に至った)

       
       ↑4峰を巻いて、あと3峰で山頂か
      
11:30 :  なんの苦労も無く山頂直下まで来てしまったけど…。
       山頂直下。夏場は岩登りをする場所。
       
       よく観察すれば長野寄りに踏み跡があったのだけど、長野寄りは雪庇という先入観と、写真奥、岐阜方面に夏道の○印、
       そしてわずかに見えたトレースを目安に登ろうとしたため、滑ったら確実に滑落する急斜面に入りこんでしまった…。
       入りこんだ時は後の祭りで、コレを下手に降りるのは危険すぎる。登るしかないって状況。
       コレは今までの登山経験の中でも1,2を争うピンチ。
       小屋泊まりの人が数組登頂してたのだから、登ればきっとルートがあるから、もう登りきろうと覚悟を決めて、
       ピッケルで確実に手掛かり作って、アイゼンの爪を喰い込ませて、なんとか登りきりました。
       

       ※私が登った前日にこの斜面に入りこんだ方の記録がヤマレコにあったので、写真を拝借させていただきました。こっちの方が分かりやすいです。
       ヤマレコ(西穂高岳・日帰りピストン)
       2014年04月13日(日) [日帰り]
       (略)
       最後に西穂の頂上への直登には、中央の岩、左の雪壁、そしてステップのある右の雪の斜面の三方向があったが、
       頂上から下りてくるロープウエイからの一番乗りの方が右の雪のステップをの降りているのを見たら、足場がしっかりしていないように見えた。
       雪がグジュグジュのような感じ。
       すれ違いの意味もあり、思い切って、左の雪壁に出た。
       雪が固い。アイゼンを蹴り込んで前歯が刺さるだけという部分もあり、傾斜も強いので、ピッケルのピックを指しながら登る感じ。
       古いトレースは見えたが、いずれにしても固まっていた。これでは登りは何とかなったが、ちょっと下れないなと思い、
       下りは雪のステップを試すことにしようと思った。
       西穂高の頂上はすぐ上だ。到着は12時半。誰もいない。独標を降りた時、すぐ後ろにいた人たちは、引き返してしまったようだ。
       別の数人のパーティーが登ってくるのが、ちょうどトラバースのあたりに見えている。
       振り返る、辿ってきた雪稜は、けっこうきつそうに見えている。穏やかな日でよかった。


       
       ↑こんな斜面に入りこんでしまっても登れるのだから、たった1本だけどピッケルを持っているという安心感はとても心強いものです。
       

11:40 :  登頂!
       
       ↑笠ヶ岳方面。

       
       ↑奥穂方面。

       
       ↑登ってきた峰々。ここから見ると分かりやすいけど、雪庇だらけだなと。

       
       ↑記念撮影。

       この大絶景を見ながらラーメン食べたかったけど、電子式ライターでは着火できなかった。
       谷川岳ではカイロの中に入れて温めれば着火出来たけど、それよりも今日の方が暖かいハズ。
       寒さだけでなく、標高の問題もあるのか??
       なんにせよ、今後は3000m級の山へ登るならマッチを持参せにゃならんなと。

12:00 :  下山開始!
       
       ↑上部中央の三角形がピラミッドピーク
       そのやや左が独標。あそこまでは油断したら命を落としかねない場所。
       この細い尾根を慎重に辿って行く。
       集中力は切らせられないものの、今日みたいに確実に晴れの予報で視界も良好、適切な装備もあれば、そんなに怖くもありません。
       
       
       ↑独標2つ手前のピーク
       ココ。高所に慣れてる人からすれば全然怖くないのだけど、写真に撮ると物凄く怖く写るのです。

       
       ↑雪が無い時の写真。
       今までの西穂往復で何度も見ず知らずの他人が通過している様子を写して、ココが絵になると知ってたので、今回は自分自身を友人に撮影してもらいました。
       
       写真を見比べて分かったけど、雪がついてる分だけ夏よりもはるかに楽に通れる反面、トレースはカナリ際どいラインについています。
       これって雪庇に少しかかってないか??
       あまり他人のトレースを当てにしすぎるのも問題ですな。

13:00 :  独標へ戻ってきた。
       
       ↑中央やや下に登山者が写っていますが、コイツ、ピッケル無し。夏でも両手フリーにして三点確保していくこの危険区間でステッキ両手持ち。
       おいおい大丈夫かよ??と友人と話していたのですが…。
       さらに後から分かったけど、コイツは軽アイゼンだったとのこと…。
       いくら天気が良いからって、自分達が降りてくるような時間で独標から先へ突入する時間的余裕の無さ&軽装備。
       遭難の要因がそろっている。無謀行為そのものですよ。
       (ここから先、ちょっとでも滑ったら奈落の底へ一直線だし、仮に自分達が陥ったみたいに急斜面へ入りこんだら、この装備では脱出すらできない。)
       
13:40 :  西穂山荘着
       別の登山者から話しかけられ、
       登山者:「独標手前でピッケル無しで軽アイゼンの人を見かけたから注意したのだけど、あなた達も見ましたか??」
       自分 :「ピッケル無しの人なら独標から先に突入して行きましたよ。というか、足元は見てなかったけどあの人って軽アイゼンだったのですか!?」
       (※この時期の西穂に来るからには、前歯爪アイゼンは必須装備だから、足元まで自分は見てなかった)
       と答えたら…。
       登山者:「え、あの人、独標から先に行ったのですか!?」
       お互いマジで驚き合いました。
       勇気を持って踏み出すのと無謀は別問題。
       その後「ああいうヤツが遭難事故を起こすのだ」と話題に。

14:00 :  西穂山荘出発

14:35 :  西穂高口着
       
       ↑いくら駅周辺は観光客(外国人観光客)が多いからって、
       「小便をしない」
       って張り紙ってねぇ…。
       最近、北アルプスではこんな低レベルな注意書きばかり見かけて、気が滅入りますよ…。
       
       

       
       
       ↑本日のGPSログ


最後に…。
ヤマレコ(遭難!死を覚悟した…西穂高岳)
2014年04月10日(木) 〜 2014年04月11日(金)
コレは、別の意味で興味深い、自分達の4日前に登った人が陥った遭難未遂の記録。
低気圧通過後、等圧線が南北に走る冬型になって、朝は快晴でも一気に吹雪になってホワイトアウト。
あの細い稜線で迷うに迷って命からがら小屋に辿りついた。
冬型の気圧配置が予測されている日に登るとこうなるのが、この時期の北アルプス。
この時期に登るからには、事前に天気図をよく見て、入念な予測をするのは絶対必要だという教訓を得られます。
(この日の天気図を見る限り、高層天気図を解析するまでもなく典型的な冬型なので、どちらかと言えば自業自得だなとは思いますが…。)


いろいろ怖い事を書いてはいますが、
なんだかんだで、私がこうやって無事に帰ってこられたのも、
事前に入念な天気予測をして、適切な装備をもって入山し、その時々でしっかりと考えて状況を判断しているから。
ここまでする代償として、あの穂高の峰々の大絶景を拝ませていただいているのだと思っています。

山頂直下で誤って急斜面に入りはしましたが、
天気が良くて時間に余裕もあってピッケルを持っていれば、焦る必要なんて全くない。
確実に一歩一歩しっかりと手掛かり足がかりをつくって進むだけです。
しっかりとした下準備をして精神的な余裕を持つのは、雪山ではとても大きなアドバンテージになるかと思います。

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