奥穂高〜ジャンダルム〜西穂高縦走
↑このルートの核心部の空中写真
よくここを突破できたよなぁと…
これを今年の目標としていただけに、達成感は計り知れないものがあります。
注意
※ここは日本最難関の一般登山道です。
他の登山記録に載せている山とは比較にできない危険さです。
※奥穂高(3190m)から西穂高(2909m)まで延々と岩壁を登っては降りての繰り返し。
しかも浮き石だらけ…。
クライミングの道具なしで突破できるので「一般登山道」と名乗っているし、目の前の断崖を登れないとは決して思わないけれど、一瞬たりとも気軽に歩ける場所などありません。
両側絶壁。落ちたら死あるのみです。
ここへ安易に踏み込むのは危険すぎます。十分な実力を付けてから挑んでください!!
8/27
22:00 : 新穂高温泉駅の駐車場着 仮眠
8/28
3:00 : 起床
4:00 : 登山届を提出して右俣林道へ。
車が濡れてたから、夜中に雨が降ったみたい。
歩いて行くうちに明るくなって、雲も取れてきた。
笠ヶ岳が見えた!!
6:00 : 右俣林道終了
↑ここから樹林帯歩き。
7:00 : 樹林帯を抜けて重太郎橋を渡る。
↑この橋が初日の最重要ポイント。
橋とは名ばかりの木材。増水したら渡渉できないから…。
渡渉ついでに沢の水を補給。
写真左側の沢沿いに取りつけられた崖沿いの道を進んで白出大滝を左から巻く
7:50 : いよいよ白出沢のガレ場へ
↑ここでガレ場を横断して、右側のガラガラを標高差900m近く登っていく…。
ここで下山者とすれ違ったけど、話を聞くと…。
↑崖沿いの道(標識のすぐ右)へ入らずに、ガレ場を直降したようで…。
白出大滝へブチ当たって手詰まり。地図を見たら滝を崖沿いから巻くようになってたから、とりあえず登り返してきたとのこと。
無理して滝を降りると滑落死あるのみなので、この判断は正しい。
迷ったら登り返すのが登山の基本。ここはやっぱ基本の分かっている人が来る場所だなと実感。
↑この鞍部に本日のお宿の穂高岳山荘がある。
↑想像していた以上にガラガラ登りはしんどい。
翌日が本番なので足を持たせないといけないから、元々スローペースで登っていたけど、それでもしんどい。
だいぶ山荘の建物が近くに見えてきたのに、時間がかかる…。
11:00 : 穂高岳山荘着
宿泊手続きして、昼食。
山荘から白出沢を眺めてみたけど…。
よくもまぁこのガラガラを登ってきたものだと。
新穂高から奥穂山荘まで標高差2000m程度。登るだけなら楽勝だろうと考えていたけど、洒落になってないキツさだった…。
一休みして、山荘へ荷物を預けて奥穂高岳へアタック
荷物がないので軽快に飛ばす。
↑明日登るジャンダルムが見えてきた。
11:40 : 奥穂高岳山頂!
↑これで日本の標高1位〜5位を制覇!!
参考までに…。
今まで登った日本の3000m越えの山
1、富士山(3776m)
2、北岳(3192m)
3、奥穂高岳(3190m)
4、間ノ岳 (3189m)
5、槍ヶ岳(3180m)
14、御嶽山(3067m)
18、仙丈ケ岳(3033m)
19、乗鞍岳(3026m)
------3000以下------
22 剱岳(2999m)
12:00 : 明日突撃する馬ノ背の下見へ
↑確かに細いし、落ちたら一発アウトだけど…。
そこまで怖いとは…。
(荷物もないし、身軽だからなおさらそう思えた。)
13:00 : 山荘へ戻ってきた。
↑夕食の時間まで涸沢や流れゆく雲を眺めながらビールで一服。
17:00 : 夕食
↑山の上でこれだけ豪華なものが食べられるのは有難い。
しっかりと腹ごしらえして、早々に就寝
8/29
3:00 : 起床。外は星の海。天気良好、風も無し。 急いで支度。
※ココから先、基本カメラはザックの中。
安全と思われる場所でしかカメラは取り出してません。
4:00 : 山荘出発
流石にいざという時に通報してほしかったので、ガイド雇ってた団体さんの後に付いて行った。
4:40 : 奥穂高山頂
団体さんに続いていざ馬ノ背へ。
↑暗闇の中で準備中。
↑下に降りたら明るくなってた。
↑ちょっと先のピークから馬ノ背を下る人を撮影。
みんな口をそろえて馬ノ背の下りが怖いと言うけれど、
個人的にはロバの耳(ジャンダルム手前の垂直登り)の方が怖かった。 ロバの耳は垂直登りなのに鎖なしで浮石だらけ…。
確かに馬ノ背はスッパリと両側キレ落ちていて迫力満点だけど、高所恐怖症でなければなんとかなるものですよ。
(それに自分は手足が長いから、すぐにひっかかりが見つかる。これはとても有利だし…。)
そうこうしている間に御来光。
太陽自体は山影で見えず…。
↑槍ヶ岳
↑富士山。
去年槍ヶ岳から見た景色と似たようなものだけど、
去年と違うのは、手前の甲斐駒ケ岳も北岳も登った事。
あそこに全部登ったのかと思うと、感じるものが全く違います。
↑不気味にたたずむジャンダルム
太陽と反対方向はまだ暗い…。
5:30 : ロバの耳
↑ここを降りて、目の前の断崖がロバの耳…。
ここは登るのに苦労した…。
↑やっとジャンダルム手前まで来た。
ここは直登せず長野側の崖に沿って行って裏から登る。
ただ…。登る場所が不明瞭で落石起こして…。
人が近くにいたからヒヤヒヤモノ。
(上から見ればルートは楽勝で分かるのに、下からだとよくワカランかった…。)
6:00 : 念願のジャンダルム登頂!
↑笠ヶ岳方面
↑槍ヶ岳方面
↑2909mの西穂はまだ眼下だ…。
2455mの焼岳なんてカナリ低く見える…。
↑記念撮影
6:10 : ジャンダルム出発
ここから天狗のコルまで標高差300mの下り。
↑長野側を巻いて降りて…。
岐阜側へまた戻る所でガイド付きの団体さんが休憩に。
正真正銘ここから先は1人で行く事に。
しばらく降りて○印が見えない場所で詰まってしまった。
↑周囲を見渡すと踏み跡があったので、このピークを登るのかな??
とりあえずピークまで出てみたけど、そこから先の道が無い…。
そして下を眺めると、さっきの場所から見えなかった所に○印発見
ガスってなくてホントに良かった…。
しばらく進んで天狗のコル手前。
↑目の前の天狗岳に人が見える。
ここも洒落になってない岩山だ…。
7:00 : 天狗のコル
ここでさっき岩山の上に見えていた人(西穂山荘側から来た)とすれ違う。
それと、休憩してたら5時に奥穂山荘を出発した人から抜かれた。
↑天狗のコルから岳沢へのエスケープルートらしいけど、白出沢以上のガラガラ。流石にココを降りる気は起きない…。
天狗のコルから垂直に鎖を登って…。
7:30 : 天狗岳
↑奥穂方面
↑西穂方面。やっと西穂山頂と目線が同じ高さに
7:45 : 目の前の間ノ岳を目指していざ逆層スラブへ
↑間ノ岳
↑まるで吸い込まれていくかのような奈落だ…。
↑ここが悪名高い逆層スラブ。
断層が逆で足をかけにくいし、滑るし…。
ただ、鎖がついているおかげで、見かけほど怖くないです。
↑逆層スラブ全景
↑ガイドさんにロープで確保してもらって逆層スラブを降りる人も…。
8:00 : 間天のコル
間ノ岳手前。
↑あのトンガリへ垂直登り
8:20 : 間ノ岳
↑奥穂方面を撮影
↑間ノ岳のちょい先。
もちろん落ちたら一発アウト。
9:00 : 名もないピークから西穂方面を撮影
↑西穂まであと一峰!!やっとここまで来た!!
それと、天狗のコルで抜いて行った人たちが西穂山頂に立ってるのが見えた。
早いなぁと…。
↑西穂の直登。ココもガラガラ。最後まで一瞬たりとも油断できない…。
9:30 : ついに西穂到着!
↑無事生還を記念して槍をバックに記念撮影
↑奥穂方面。
よくもまぁこのすさまじい場所を歩いてきたものだと…。
ここから先は去年歩いているので省略。
詳細は↓をご覧ください
新穂高、西穂高日帰り登山
西穂から先も西穂独標まで崖登り&尾根幅細いから油断できないけど、浮石が少ないから楽勝。
浮き石のあるなしでこうも違うとは…。
↑独標手前
去年来た時はこんなに○×のペイント無かった。
独標までは初心者も登るし事故も多いのだろうけど、流石にこれはやりすぎ!景観台無しだろと…。
独標を過ぎると尾根幅も広くなるから死の危険は皆無に。
やっとリラックスして歩けるように。
ホント、普段は如何に楽な登山をしているのか思い知らされました。
11:30 : 西穂高山荘にて休憩
13:00 : 新穂高口からロープーウエイで下界へ!!
無事生還!!
今回のデータ
・奥穂→西穂で消費した水1.5L (一応3Lは用意していた)
日の出前にジャンダルム手前まで登っているので、日の出後出発だと+0.5Lくらいみておくべき。
・奥穂山荘→西穂高山荘まで所要時間7時間半
(転倒=即死なので、カナリゆっくり歩いてこの時間。落石を防ぐ観点からもこのくらいのペースがちょうどいい。)
・起こした落石2回
(1回は近くに人がいた。当たらないで良かった…。)
・ルートミス3回。
(基本○印のペイントを追っていけばいいものの、どうしても見えないところが多々ある…。踏み跡を頼りにしてるとそれが間違ってる事も…。)
クリアした感想…。
奥穂高(3190m)から西穂高(2909m)まで延々と岩壁を登っては降りての繰り返し。
落ちたら死ぬという暗黙のルール。
それは高所恐怖症だろうがなかろうが皆同じ。
仕事柄、高い所に免疫がある自分だし、目の前の岩壁を決して登れないとは思わないけれど、浮き石だらけだから西穂高前まではホントに一瞬たりとも気を抜けない場所の連続。
同じ岩登りでも西穂から先は楽勝。浮き石のあるなしでココまで違うのかと…。
反省点は多々あるけど、単独突撃して無事生還しただけでも上出来。
今回全行程視界がクリアだったから良かったけど、ガスってたら○印見えないし難易度3倍くらい上がる。
そして雨が降れば難易度10倍と言っても過言ではないかと…。
最後に…。
奥穂高→西穂高縦走したい人のために、何が必要か書いておきます。
・前日に5kg程度の装備を背負って奥穂高まで登れる脚力
・その翌日に、空気が薄い3000m級の稜線を7時間近く歩き通せる(と言うよりは岩登りする)だけの脚力
(お昼を過ぎると雷雨の可能性が高くなるし、夜になれば凍えるような寒さ。到着の遅れは死を意味する。)
・山岳知識
・天気図から気象を読み取れること
(天気図を分析して、夏休みを無理矢理2日前倒しした事も今回成功した一因。)
これが挑戦するための大前提。
↓↓
上記をふまえた上で
・高所でもひるまない度胸
・確実な三点確保をする能力
・ルートファインディング能力
(正確に言うならば道を誤っても1分以内に気が付く能力)
・浮き石を見分ける能力
(自分は今回、体重かける前に必ず一度軽く触って確認してた)
・常に落石を意識して上部を警戒する能力
・そしてこれら全てを生還するまで切らさない集中力。
これだけないと待っているのは死あるのみです。
今回自分がクリアできたのは、それなりの時間と金をつぎ込んで、体力と経験を付けた日頃の山行の成果なのだと…。
ココは生半可な知識と経験で足を踏み入れてはいけないと実際に行ってみて良く分かったけど、これだけの能力が試される場でもあり突破出来た時の達成感は計りしれません。
7時間以上も命の危険を晒す事なんて早々あったものじゃないし、ホント今までの人生観が変わりますよ。
気軽に挑戦しろとは言えないけれど、みなさんもぜひ知識と経験をつけて挑戦してください!!