水晶、鷲羽、黒部五郎縦走(西鎌でクマと遭遇)
水晶岳(2,986m)、 鷲羽岳(2,924m )、黒部五郎岳(2,840m)
北アルプス最奥の百名山を登って、ついでに西鎌尾根を通って槍の穂先に寄る計画を立てて
2014年8月31日から3泊4日で行ってきました。
(もとから北アルプス最奥の百名山、水晶岳には行きたかったけど、黒部の山賊を読んだ影響も大きいかなと。戦後すぐの混乱期。三俣山荘が山賊に乗っ取られていた事を書いた実話。面白いので、山好きなら読む価値アリです)
注意
※結果的に3泊4日で走破しましたが、標準タイムで考えると5泊6日が妥当な行程だと思います。
十分に余裕を持って計画を立ててください。
8/30
17:00 : 相模原出発
21:10 : 新穂高登山者用無料駐車場着
雨が降ってるのにほぼ満車
流石土曜日の夜だけあるなと。
辛うじてスペース見つけたので無事に駐車できました。
8/31
0:00 : 便所へ行ったら星が見えてたけど、1時間もしないうちにまた土砂降り
まったくもってワケワカラン天気だ…。
3:50 : 新穂高登山者用無料駐車場出発
小雨の中を出発
新穂高の山岳警備隊の所で登山届を提出
5:20 : わさび平小屋
雨は完全に止んでくれたなと。
秩父沢付近から。
ジャンダルムが見えている
8:25 : 鏡平
晴れてたら池に槍ヶ岳が反射しているのだが…。
今日は無理。
10:30 : 双六小屋
昼食で30分ほど休憩。
ビール飲みたいけど、遭難防止の観点からも、行動中は絶対に飲酒しないようにしているので、あと数時間は我慢…。
11:00 : 双六小屋出発
だいぶ天気もマシになってきたものの、この状況で双六山頂へ向かっても仕方ないので、
巻道ルートをのんびり歩いて行く事に。
13:30 : 三俣山荘到着
明日の天気図を取得したかったけど、電波入らず…。
鷲羽か三俣蓮華の山頂へ行かないとダメらしい…。
流石にそこまで登る気力はもうない。
小屋のNHKBSのデータ放送を見る限り、明日は午後から雨の予報。
とりあえず明日は午前中のうちに進めるだけ進む事に
食堂に展示してあった黒部の山賊のパネル
本当に山賊がいたのだから、この話は面白い
あと…。
パネル左側の写真の犬。コイツは槍から三俣まで1時間で駆け抜けてきたとか本には書いてある(笑)
人間なら丸一日かかるのに、凄いものですよ。
初日GPSログ
初日標高ログ
樹林帯のところで多少ノイズが入っているので、累積標高は微妙だけど…。
移動距離20.6km
累積標高+2943m(実際は+2000mちょいくらいではないかと)
9/1
4:30 : 三俣山荘
上空に雲はあったけど視界良好。
また戻ってくるので重たい荷物は山荘に預けて、簡易ザックに水と合羽と携行食を入れて出発
途中雷鳥が飛んでいくのを見たけど、暗すぎて撮影できず…。
(結局コレが今回の山行きで見た最初で最後の雷鳥さんだった)
5:30 : 鷲羽岳登頂
鷲羽池と槍ヶ岳
記念撮影
休憩ついでに天気図等を取得。
雨が降っているのは南アルプス付近、コレが徐々に北上する予報。
こりゃ持っても午前中までなのは確実だなと。
いざ水晶岳へ
だいぶ近くなってきた。最後はちょっとした岩登りだなと。
当然だけど水晶の採掘は禁止
国立公園内では草木一本、石ころ一つ持ち帰ってもダメです。
7:15 : 北アルプス最奥の百名山、水晶岳登頂
記念撮影
赤牛岳方面
恐らく日本の山であそこが一番山頂を踏むのに時間がかかる山ではないかと…。
8:10 : ワリモ北分岐
戻るだけなら稜線沿いに行った方が明らかに楽だけど、せっかくここまで来たので源流点を見ていく事に。
最初チョロチョロだった水音が、下っていくごとに大きくなっていく…。
途中、出会い頭でオコジョに遭遇したけど、写真を撮る間もなく逃げられた…。
9:20 黒部川源流点
雲の平方面は渡る必要がある
※源流の碑を探し回って渡渉したけど、水晶→三俣山荘へはココで渡渉する必要なしです。
(水晶からの下りで、数回小さな渡渉はしたけれど…)
結局、三俣側に登った先の登山道沿いに碑はあった…。
水晶⇔三俣山荘を歩いていれば嫌でも目に入る場所…。
水晶から下ってきた谷
9:55 : 三俣山荘到着
標準7時間のところを休憩込み5時間20分か。身軽だとカナリ早い。
3000円くらいしたけど、小さく折りたためる簡易ザックは買って正解だったなと。
10:30 : 三俣山荘出発
巻道を進んで
雪渓を渡って
小屋が見えてきた。
12:30 : 黒部五郎小舎到着
ビール飲みながらラーメン食べていると13時過ぎから雨に…。
急いで撤収。
深夜には晴れてくれて、星の海!
(もっと撮影したいけど、長時間露光は電池の減りが早いので我慢…。)
2日目GPSログ
2日目標高ログ
移動距離14.35km
累積標高+1339m
9/2
4:45 : 黒部五郎小舎出発
暗いので尾根道を選択。カール道は下りで利用して、周回する事に。
途中でGPSの電池が付きた…。
予備の電池は1セットあるけど、このまま使うと最期まで持たない。
今日は視界良好だからGPSは要所のみ使用。
御来光
笠ヶ岳方面、何故に弓折岳って名前なのか、こっちから見たらなんとなく分かった。
カール内に岩がゴロゴロしているからゴーロで五郎らしい…。
6:30 : 黒部五郎岳登頂
記念撮影
小屋は圏外だったので、やっと山頂で天気図取得できた。
4日後半から5日にかけて日本海に低気圧をともなった前線がやってくる。
この天気図は北アルプスにとって最悪
4日午前中には下山する方針へ。
※今回、山小屋でいろんな人と話したけど、みんなテレビの下界天気予報のみを気にしていて
天気図を意識している人って意外と少ないのだなと…。
山の天気なんてコロコロ変わるのだから、下界天気予報なんて参考程度だし、雨が降っても合羽を着て凌げるレベルならそれでいい。
合羽ではキビシイほどの大荒れや雷になるかが大事だと思うのだけどねぇ…。
その指針が天気図なワケで、身の安全の為にも、もっと天気図を意識すべきだとは思いますよ。
カール道へ
8:40 : 黒部五郎小舎
標準5時間の所を休憩込み4時間
荷物が無いと相変わらず早いなと。
9:00 : 黒部五郎小舎出発
ここから標高差500m程度登る
荷物があると流石にペースが落ちる…。
昨日は小屋しか見えていなかったのに、今日は最高ですな。
三俣蓮華岳への道のりはまだ遠い
10:40 : 三俣蓮華岳到着
鷲羽岳と水晶岳。今日は最高にいい天気ですな!
尾根道を進んで…。
12:00 : 双六岳到着
今日の槍ヶ岳はコレで見おさめ。ガスってしまった…。
天気分析してみたけど、明日の南岳行きは止めた方が無難。
早いうちに槍平まで降りておくべきだなと。
12:55 : 双六小屋到着
昼飯!
3日目GPSログ
3日目標高ログ
移動距離13.65km
累積標高+1197m
※3日目は小屋や山頂等の要所でしかGPS電源を入れていませんので、あくまで目安です。
9/3
4:15 : 双六小屋出発
200mほど登って…
4:45 : 樅沢(もみさわ)岳
日の出を見るにはまだ早いなと。
次のピークへ移動
素晴らしい景色だ!!
立ち止まって写真を撮っていると…。
後方から、ガラガラ、ザザ〜!!と音が!
何だ!?落石か??と振り向いたら、
∩___∩
| ノ ヽ
/ ● ● | クマ──!!
| ( _●_) ミ
彡、 |∪| 、`\
/ __ ヽノ /´> )
(___) / (_/
| /
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| / ) )
∪ ( \
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シャッタースピードをマニュアル固定にしていたので、急いでAVモードにして、目いっぱい絞り開いて、ISO感度上げて撮影成功。
まだ薄暗い中でこれだけ撮影できれば十分ですよ。
耳にタグが見えないから、捕獲された事がないクマさんだなと。
クマのいた斜面。本来ならまだコレだけ薄暗い。↑で明るいのは画像補正かけているからです。
※↓ココからはメインページに乗せてた記述そのまま貼り付けます。
| 状況を整理してみたら、今回クマと遭遇したのは、遭遇すべき環境が整っていたし、
| 家に帰って詳しく解析してみたら、下手すりゃ出会い頭に遭遇して、
| 襲われていてもおかしくないカナリ危険な状態だった事が分かりました。
|
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━━ V
遭遇場所
双六小屋から槍ヶ岳へ続く西鎌尾根
樅沢岳東側の標高2730mピーク南側斜面、標高2700m付近
状況
1. 9/3、双六小屋側から西鎌尾根へ私が一番最初に足を踏み入れた。
2. 熊鈴は所持していたけど、まさか標高2700m越えている西鎌尾根の稜線にクマなんているワケないと思っていたので、
鈴は鳴らしていなかった。
3. 槍の景色写真のように、飛騨側(クマのいた斜面側)から風が稜線の登山道へ吹きついていた。
つまり、登山道はクマのいた位置に対して風下にあたる。
体感で5〜8m/sくらいのやや強めの風だったので、私が通過した際、クマはこちらに気付いてなかった。
(人間の臭い、足音等、風上にいるクマには届いていない)
3. GPSログから詳しく解析してみたら、遭遇時、クマまでの距離は60〜80mだけど、
ガラガラと音がして最初に振り返った時に見たクマの位置と登山道は20mも離れていない。
4. 登山道近くのハイマツの中にいたクマが、同じ場所にとどまって写真撮影していた私にたまたま気がついて、逃げ出したと考えるのが妥当。
5. 槍ヶ岳山荘に到着後、報告したら、
地形図を見る限り、沢の上流部分にあたるので、クマは沢を登って稜線近くまで来ていたのではないか、
西鎌稜線まで来るのは珍しいけど、数年前にも目撃情報はあったとのこと。
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| つ ∇ (゚Д゚;) (゚Д゚;)
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| 一度野生のクマは見てみたいと思っていたし、いざとなったら戦う覚悟はしているものの
| まったくもって無警戒の場所で遭遇するとビックリしますよ…。
| いやはや、森林限界を超えている稜線にクマなどいるワケないという考えは捨てるべきだというのが、今回の教訓です。
|
| (稜線で鈴を鳴らしている登山者に対して、五月蠅いなぁ…。こんな所で鳴らさなくてもいいだろと思っていたけど…。
| 撤回します。ごめんなさい)
\____ ∧
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| 人間を襲って排除する事を覚えたクマは、そのうち狩られてしまうので、
| 出会い頭に遭遇する事はクマにとっても人間にとっても不幸な事。
|
| クマを見かけたらきちんと報告して、登山者に鈴を鳴らしてもらい警戒してもらうのが大事です。
気を取り直して…。
左俣乗越。ここが中間点か…。
ガスが取れてきた…。
ちらほらと鎖が出てきたけど、双六→槍に関しては基本的に登りが鎖場になるので、鎖に頼らなくても大丈夫かなと思います。
8:20 : 槍ヶ岳山荘到着
槍のバッチはもう持ってるので、大喰岳と中岳のバッチを購入。
ついでに西鎌でクマを見たと報告。
(やっぱ写真を撮れた事は大きくて、周囲にいた登山者も興味を持ってきた)
いざ穂先へ
いつもは渋滞している槍の穂先もガラガラ。
標高差100mの岩登りを10分かからずにクリア…。
落ちたら死ぬのは間違いないけど、もはや全然怖いとも思わなくなっている…。
西鎌尾根。ここの稜線までクマが登ってくるのだからねぇ…。信じられんものですよ。
9:15 : 槍ヶ岳山荘出発
下界まで14.4km。下界への道は長い…。
飛騨沢。槍ヶ岳山荘のスタッフが赤旗を立てなおしてた。
これのおかげでガスってても歩けるのだから、ありがたいものですよ。
11:20 : 槍平
クマを目撃した後にこの看板は如何ともしがたいもどかしさがあるなと…。
本当はココで宿泊するつもりだったけど、標準タイムよりもカナリ早いペースで降りてきている…。
まだまだ元気だしココで宿泊しなくても、あと3時間あれば下山できる!
それにココの宿泊代で、温泉代と高速代と酒盛り代は余裕でお釣りがくる。
流石に4日も風呂へ入ってないから体も臭くなってきたし、頑張って降りることに!!
数週間前に3人流されたから、警告看板が立ってる
滝谷出合の流された現場。
平時のこの水量でも渡渉するのを躊躇する水量なのに、橋の上まで水がある状態で渡るとか、そりゃ流されて当然だろと…。
余裕を持った行程を立てないし、天気図を分析しない連中が、無理して渡ろうとするから、流される事になるのだと、改めて実感。
12:50 : 白出沢
ココは砂防工事してて吊り橋がかけられていた。
14:10 : ついに下山!
念のため下山届出すついでに、山岳警備隊にもクマの件を報告。
温泉に入って帰途へ!
4日目GPSログ
4日目標高ログ
移動距離21.97km
累積標高+1358m
累積標高-2824m
最初は天気が微妙だったけど、結果的に行動中は大雨に降られていないし、
これだけの景色を拝めたし、クマとも遭遇できたし、充実した山行だったなと。
南岳のバッチを買えなかったのは残念だったけど、安全のためには仕方がない。
今度は皆が食事が最高だと言うヒュッテ大槍に泊まって、南岳経由で天狗原でも眺めて下山するコースを巡ってみようかなと思います。