立山縦走&雨の剱岳別山尾根登山
剱岳別山尾根
映画「剱岳点の記」の影響で一般人も大勢登りにくるようになったルート。
鎖や足場が整備されているし、(まともに整備されてなくて6時間ずっと集中しっぱなしの奥穂高〜西穂高の稜線に比べりゃ)要求される技術はそこまで高くないとは言え、一部の場所がヤバいのに変わりはない。
ここを登る場合は、それ相応の覚悟が必要…。
注意
※当然のことながら無雪期限定。冬に登る場合はそれなりの装備が無いと死にます。
※このページの写真を見て躊躇するようならば挑まない方が無難です。
※今回は雨で登っていますが…。安易に雨の剱岳へ登るのは大変危険です。
(視界不良、岩が滑る、突風…)
今回は下記の根拠があったので突撃した次第です。
「奥穂高〜西穂高の険しい岩稜登山経験アリ」
「雨の登山経験アリ。装備も徹底した雨対策済」
「雲が高くガスもかかっておらず山頂まで見通せた」
「天気図的にはお昼まで雷は絶対無い」
↑アタック前日に取得した翌朝9時の予想天気図
台風から日本海へ抜ける気圧の谷(日本海に前線)
太平洋遥か東から伸びる高気圧の気圧の尾根
日本アルプスの場所は両者の狭間で、天気はどっちに転ぶかワカラン。
ただし、前線からは十分に離れているので午前中のうちなら雨が降ったとしても雷が鳴る事はまずない。
ここまで予測できなければ、雨の中を突撃するべきではありません。
要するに、素人がいきなり登れる山ではありません。それなりの経験を積んだ上で挑戦してください。
2011年9月15日
23:00 : 扇沢駅着。仮眠
9月16日
6:30 : 起床
予報通りいい天気だなと。
7:30 : 始発トロリーバスに乗って
黒部ダムを越えて
9:15 : 室堂着
↑絶好の登山日和だ。
今から登る立山の峰々が良く見える。
9:45 : 一ノ越着
↑槍ヶ岳と笠ヶ岳
↑富士山
自分の富士山目視距離の最長記録だ!(地上限定。飛行機からを除く)
10:45 : 雄山(3003m)山頂着
↑山頂は神社の境内なので500円とられます。
↑まぁ、御祈祷してもらってお神酒も飲めたので値段相応かと。
↑室堂方面。富山湾や能登半島まで見渡せる。
11:15 : 大汝山(3015m)着。
↑ここが立山最高峰
大汝山からは200mほど下って
↑万里の長城みたいな縦走路を行く
↑白馬方面もよく見えるなと
13:00 : 別山乗越(剱御前小屋前)着
↑この雄大な剱岳の景色を眺める為にココまで来た。
この写真が撮影できただけでも、目的の半分は達成であります。
昨年登った 早月尾根 (写真左側の尾根)からは
尾根の陰になって、このギザギザの山塊は見られなかったから…。
14:00 : 本日のお宿の剣山荘着
↑ここは沢筋だから水は豊富(水洗便所だしシャワーも使える)反面、ドコモですら携帯の電波が入らない。
使いたかったら稜線(黒ユリのコル。徒歩10分程度)まで上がってくれと言われた…。
(稜線の小屋なら電波は入るけど、水は貴重だから水洗便所やシャワーなどありえない。水を取るか電波を取るかですな。)
折角スマートフォンという高機能情報端末を所持しているのだから、使わないのは宝の持ち腐れ…。
天気図取得のために稜線まで登る事に
↑稜線に向かってると雷鳥さん発見。
周囲に4羽いたから、今年生まれた雛とその家族だろうなと。
今年は当たり前のように見かけているけど、全国でも3000羽程度しかいない特別天然記念物であります。
天気図取得して、明日の天気を予測…。
(結論を導く過程は上記の「注意」で書いた通り)
「どっちにころぶかワカランけど、明日の朝なら雨が降っても大荒れはない…。
2日後となると台風接近と前線南下だから天気図的にも最悪。
行けるとしたら明日の午前中しかチャンスがない。朝起きて小雨くらいなら突撃する。
もしも大雨なら潔く室堂まで引き返す。」
これが無難な判断かと思います。
明日の行動が決まったので、株価やニュースを確認してから小屋へ戻り。
17:00 : 夕食を食べて就寝…。
9月17日
3:00 : 起床
天候若干の小雨。風速3m/s程度。視界クリア。雲の高さ5000mくらいか??
6時間以内に戻ってくるなら行けると判断。
ただ…、真っ暗な中を一人で行くのは事故った時にリスクが大きすぎるので誰か来ないか待っていたら、夕食の時に斜め前に座っていた2人が出てきた。
「雨が降ってますけど行きますか?」
と聞いてみたら、
「行ける所まで行ってみる」
との返事だったので、お供させてもらう事に。
4:00 : 出発
彼らのペースが分からんので。自分が後ろでついていったら…。
流石に日本一の難所である奥穂高〜西穂高を突破して得た経験値は大きくて、彼らが道を外したらすぐ気が付くのですよ。
何度か指摘しているうちに、すっかり名ガイドさんだと信頼される事に…。
(帰りに彼らが誤ったポイントを見てみたら、明るければ間違う事など100%ありえない。
○印あるし、どう見ても崖に突っ込むし…。
暗いから○印を完全に見落としてた。自分は印が見えなければライトで周囲を照らすし、踏み跡がガレたらスグにおかしいと思う癖をつけているから。)
そんなワケで、先導を任されてしまい、自分が先頭を行く事になって…。
5:30 : 前剱着
↑剱沢方面。
ガスってはないけど、上空は高い雲に覆われていると分かるかと。
↑山頂方面。明るくなって上空の雲が染まってきた。
5:35 : 前剱出発
↑前剱からが本番。滑落 = 一発アウトな危険領域へ。
神経を集中していざ出発。
5:40 : 前剱の門
↑崖沿いのトラバース。
↑通過中。
まぁ見た目ほど怖くはないかと。
奥穂〜西穂間の浮き石だらけで細い稜線に比べりゃ楽勝ですよ。
6:00 : 平蔵の頭
↑ここも金属製の足場が打ってあるから、見た目ほど怖くない。
三点確保を忠実に守って突破するのみ。
6:20 : カニのたてばい真下に来たところで大雨に…。
↑大雨だったので、この写真は帰りに撮影。下で待っている人と登っている人の大きさから高さが分かるかと…。
自分一人なら行けるけど、後ろの二人の技術が不明。彼らもココに来るからにはそれ相応の覚悟の元で来ているのだろうし、
相談した結果、これを越えたら頂上だし、登ってさっさと帰ろうという事に。
…
大雨だから写真もないし、気づいたら突破してました。
ホント雨だと滑るから洒落になってない怖さだった。全神経を四肢に集中ですよ。
6:40 : 山頂着!本日の一番乗り。
標高2999mなので、立ったら3000m超え!!
横殴りの雨だったので完全防備。
(山頂はまだマシ。山頂直下の稜線が風の抜け道になっているようで、顔に当たる雨が小石のようで痛かったです。)
↑源次郎尾根の一般登山者立ち入り禁止のプレートと、室堂方面。
流石にバリエーションルートへ突撃する技量はまだ持ち合わせていませんよ。
6:55 : 長居は無用とさっさと下山へ。
(ちなみに室堂に戻るまで、雨は降ったりやんだりの繰り返しでした…。)
7:05 : カニのよこばい。
↑ここからカニのよこばい。
↑カニのよこばい核心部を上から
↑お供した人を撮影。
ココの踏み出しが一番怖い。
↑なんとかクリア。
ココは3点確保しているとご覧の通り足をかける場所がないから、勇気を持って踏み出すしかない…。
まだ自分は手足が長い分人よりは有利だけど、ここも濡れていたから恐ろしかった…。
↑梯子、鎖と危険個所は続く…。
↑前剱の門を進む人々…。
7:35 : 前剱
↑前剱まで戻ってきたところで記念撮影。
このお二人。会社の同僚同士らしく岡山から来たそうです。
危険個所を一緒に突破したからやっぱ親近感が湧くものですよ。
自分は事故った時に通報してもらうのが目的。
彼らは自分のルートファイティングスキルを買ってくれた。
Win-Winの関係ってやつです
9:00 : 小屋まで戻ってきて彼らとお別れ。
↑剱岳のこの景色ともお別れ。
10:10 : 別山乗越(剱御前小屋前)
↑こうして眺めると、雷鳥沢から室堂までも結構な登り返し(+140m)だなと…。
11:30 : 雷鳥沢
12:30 : 室堂着。
激しいアップダウンを繰り返して疲れた体に、最後の最後で地獄谷の硫化水素の臭いは本当に地獄だったです…。
大量の観光客にまぎれながら帰途へ。
感想
奥穂高〜西穂高と比べると…。
・浮き石が少ない(あくまで奥穂〜西穂基準。ゼロではない)
・落ちたら一発アウトで特に意識を集中しなければいけないのは時間で2時間程度だけ(前剱〜山頂往復)、
・明るければ道も明瞭。
なワケで、圧倒的に奥穂〜西穂の方が要求される技術レベルは上でしたが…。
核心部のカニのたてばいよこばいだけは別格。
ココはマジで恐ろしかった…。しかも雨だったから滑るし…。
核心部を通過するのに必要な度胸と技術は剱岳も奥穂〜西穂も変わらんなと思いますよ
それに、室堂2400m。剱岳2999m。標高差たった600mだから楽勝かと思ってたけど、実際に通ってみると意外にキツイと実感。
何せ見かけ以上に登って下ってが多すぎる…。実際累積だと1700mくらい登り降りしている。
健脚者なら室堂から日帰り行けるか??とか考えてたけど、これを始発便〜最終便の9時間の間で突破するのは、よっぽどなキチガイレベルの健脚者じゃないと無理。
あと
今年は登山中に何度も雨にたたられたけど、そのおかげで雨に対する備えができていた部分もあります。
去年みたいに一度も雨を経験していなかったら、絶対に雨の中を剱岳に登ろうという判断はしなかったですし。ホント何事も経験だなと。
一度山頂から景色を見た山なら、雨の中を登るのもいいなと思うようにもなってきています。