八峰キレット
八峰キレット。五竜岳と鹿島槍ヶ岳北峰の間の岩稜
核心部の距離は短いものの、キレット全体の通過に必要な標準タイムが7時間と長く体力勝負な場所。
日本三大キレット(大キレット、不帰の瞼、八峰キレット)制覇の為に挑戦してきました。
注意
※滑落、落石の危険地帯です。十分に注意して通行してください。
また、台風が通過するのを承知で行ってきましたが、あくまで台風の進路が太平洋側なので
南の山々が台風の影響を弱めてくれるから、予備日が1日あれば問題ないと判断した次第です。
台風が日本海側を通過する場合、北アルプスはダイレクトに台風の影響を受けますので、
危険度が今回の比ではありません。安易に入山しないようにしてください。
2019/7/25
16:00 : 鈴鹿出発
中津川ICから国道19号へ
21:00 : 信濃大町駅前駐車場(何日停めても最大1500円)に駐車したはいいものの、
「7/28は夏祭りがあるので14時頃から駐車場の前の道が通行止めになります。車は出庫できないのであしからず」
との張り紙が…。
私の下山予定日…。駐車場の情報はネットで調べられても、夏祭りを予測して検索なんて普通しないぞと。
こりゃなんとしても28日は早朝に下山せねば。
7/26
6:13 : JR大糸線、信濃大町駅から出発
6:44 : JR大糸線、神城駅到着
五竜岳はガスっていますな。
それにしても列車の乗客が私含めて2人。道中の停車駅の利用者0人…。
完全に赤字だろと心配になります…。
(対向の大町行の列車はそこそこの人が乗っていたけど)
7:10 : 白馬五竜テレキャビンの乗り場到着
神城駅から約2q。標高差100m。入山前から水とエネルギー消費したなと。
このルートは水場が一切ないので水は貴重。乗り場で消費した水を再補給。
水だけで重さ3.5sですよ。
8:00 : 地蔵の頭出発
リフト沿いはニッコウキスゲが満開でした。
道中雪渓が何か所かありましたが、アイゼンは不要なレベル。
遠見尾根は標高2300mくらいまでガスの中でしたが、急にガスが晴れて五竜岳の姿を拝むことが出来ました。
小屋までもう少し。
遠見尾根から登ってくると、白岳(2541m)まで登って、五竜山荘(約2490m)まで降りないといけないです。
11:50 : 五竜山荘到着
本日、予約者も含めて布団1枚に2人とな…。
(どうやらこの時期は常に貼ってあるようで、結果的に台風のためキャンセルもあって1人1枚でした)
到着直後からガスったけど、夕日の時間にガスが切れました。
一日目のGPSログ。
歩行距離6.5km 累積標高+1161m -231m
(神城駅からテレキャビンまで約2qなので、歩行距離は実質8.5q…。)
遠見尾根は登り降りが多いので、地味に体力を削られます。
7/27
入念な気象解析の結果、
台風の雲はアルプスの山々がブロックするものの、予想よりも台風が内陸に入ってくるので天気は持って昼頃まで。
夜は確実に大荒れなので、「時は金なり」ではなく「時は命なり」だなと。
全行程標準タイム10時間。キレットさえ通過してしまえば大荒れでも大丈夫なので、
午前3時半出発で、14時までに冷池山荘へ到着するという計画にしました。
3:30 : 五竜山荘出発
急ぎたいけど、全行程10時間で急いでしまうと、後半バテて動けなくなるので急げないというジレンマ。
ともかくゆっくりと歩幅は短く確実に進むことに。
4:20 : 五竜岳到着
数年前に登っているので記念撮影は無し。
まだ薄暗い鹿島槍方面。
ここから北峰まで直線距離で3.5qしかないのに、標準タイムで7時間もかかるのかと…。
まだまだ先は長い…。
5:00 : キレットに降りてきました。
だいぶ明るくなって、剱岳方面もよく見えています。
本当に台風が接近してきているのか疑問になる天気であります。
ご来光は見えなかったので、モルゲンロートにはならなかったけど
日本海側が晴れているのを見ると安心できます。
危険個所は少ないものの、進んでも進んでも登り降りの繰り返しで、鹿島槍が全然近くならないです…。
こんな登り返しも地味にしんどい。
5:50 : 北尾根の頭
キレット小屋までのおおよその中間点
ああ、ガスが登ってきてしまった…。
7:15 : キレット小屋到着
五竜岳山頂からここまで標準タイム4時間だけど、3時間で到着。中々の快速ですな。
10分ほど休憩であります。
キレット小屋を出発してすぐに八峰キレットの核心部
なんというか、落ちたら死ぬのは間違いないけど、危険さで言えば不帰ノ険の方がはるかにヤバい。
ただし、キレットの通過時間(五竜と鹿島槍の間の標準タイムが7時間)を考えると、
体力的な問題も加味すれば、難易度は八峰キレッとの方が上だと思います。
ここを過ぎたらキレットの核心部は終わり。
あとは鹿島槍ヶ岳北峰まで標高差350mを登るだけ
8:45 : ガスガスだったので道中の写真はありませんが…。
鹿島槍ヶ岳北峰。
誰もいないのでタイマー撮影。
ガスが切れてきた。
どうやら今日は標高2800m付近が雲の高さっぽいですな。
9:30 : 鹿島槍ヶ岳南峰
あいかわらずガスがかかったり切れたりの繰り返し。
ここまで標準タイムより2時間早く到着。
ここまで来れば、残りはなだらかな尾根道なので一安心。
10:10 : 布引山手前
冷池山荘〜爺ヶ岳〜種池山荘までの稜線がよく分かりますな。
冷池山荘まで1時間以内に行けそうだ。
立山、剱岳(日本海方面)もいい天気だ。空も蒼いし、まだ天気はしばらく大丈夫そう。
ライチョウ親子がいたので30分ぐらい望遠レンズで撮影していたのですが、
ふと剱岳の方角を見ると…
10:40 : ↓先ほどの写真からわずか30分でこのありさま。
これはマズイ。
日本海側にいきなり黒い雲が出たという事は、台風の雲が日本海側にも到達したって事。
まさかこんなに短時間で天気が急変するとは我ながら油断しました。
11:20 : 冷池山荘到着
急いで冷池山荘へ向かったものの、到着の10分くらい前に雨に降られてしまいました。
残り10分で合羽を着るのも面倒だったので、濡れながら突っ切って到着であります。
二日目のGPSログ。
歩行距離10.9q 累積標高+1599m -1569m
冷池山荘で同じ部屋になった人が実家のすぐ近くに住んでいて…。
まさか北アルプスの山奥で実家の住所の漢字を読める人に出会えるとはビックリであります。
しかも、定年して金が余っているのか、毎年夏は数か月家に帰らず日本全国旅をしているようで、
うらやましい生き方だなと。
山でいろんなツワモノに出会いましたが、ここまでやっている人は初めてであります。
7/28
台風の直接的な影響はないものの…。
東日本に台風(東の気圧が低い)って事は、日本海からの湿った風が北アルプスに向かって吹くので
稜線が晴れるのは期待できないなと。
とは言え11時頃までに扇沢に下山しないと、先に書いたように夏祭りの通行規制で車が回収できなくなるので
湿った強風を浴びるのを覚悟の上で4時に出発する事に。
4:00 : 冷池山荘出発
5:05 : 爺ヶ岳到着
ガスってなにも見えません。
風速も10m/sくらい。
(この時期の強風は、汗をかかないから、水の消費を抑えられるのでありがたい。
ただし体を濡らしてしまうと低体温症になりかねないので、合羽を着用するかの判断は必要…。)
ライチョウ発見
5:45 : 種池山荘到着
残りは扇沢まで標高差1100m程度を一気に下るだけだ!
アルペンルートの扇沢駅が見えた。
トロリーバスから電気バスになったので架線が撤去されていますな。
つくづく思うけど、よくこんなところにトンネルを掘ってダムを作ったものだと…。
扇沢上空にかかる虹
この写真が今日の天候を全て集約していますよ。
稜線は日本海からの湿った風でガスってる。
一部が稜線を超えて大町側まで入ってくるので、ところどころ雨が降ってこんな景色になるのですな。
爺ヶ岳を超えて種池山荘までの稜線は湿った強風で苦行でしたが、下山するにつれてこんな景色も拝めて、これはこれでアリだなと。
8:00 : 爺ヶ岳登山口到着
ここから扇沢駅まで、車だと一瞬だけど、歩きだと意外と長い…。
8:15 : 扇沢駅到着
次のバスは8時55分でしたが、乗り合いタクシーの運転手から声をかけられ、6人集まったので乗り合いタクシーで信濃大町へ戻る事に。
信濃大町駅で車を回収して、大町温泉郷まで戻って、温泉に入って帰宅であります。
下界は晴れだけど山はガス。
山の天気分析は、登山口の天気ではなく、風上にあたる地方の天気を参考にせにゃならんってのがよく分かります。
ただし、後立山の天気分析が難しいのは、この写真のように日本海側からの風の影響だけで語れる日が少ないところ。
(大町側が風上だと、初日や二日目午前中のように、山の中腹までガスに包まれても、稜線は晴れている事もあるからねぇ…)
ホントに山の天気の分析は奥が深いです。
三日目のGPSログ。
歩行距離9.4q 累積標高+653m -1567m
冷池から爺ヶ岳までの登り降りと、登山口から扇沢までの登りで、下山なのに+650mも登ったのかと…。
八峰キレットを無事クリアした事で、 三大キレット制覇(大キレット、不帰ノ険、八峰キレット)の目的を達成したので 大満足であります。
台風でも行けるという判断できたのも、今まで積んだ経験のおかげ。
登山は全てが自己責任。身の安全は自分で判断しなくてはいけないから、
ホントに面白いであります。